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「8月31日まで、まだ時間はある」
そう思っていた夏休みの宿題が、なぜか最終日の夜になっても終わらない。あの絶望感を覚えていますか?
社会人になった今も、同じことを繰り返してはいないでしょうか。
「締切は来週だから、まだ余裕がある」と思っていた仕事が、結局ギリギリになって徹夜で仕上げる羽目になる。残業がいつまでたっても減らない。
それは、あなたの計画性がたりないからではありません。
人間の脳には、「与えられた時間を、あるだけ全部使い切ろうとする」厄介な性質があるからです。
これが、イギリスの歴史学者シリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した「パーキンソンの法則」です。
今回は、私たちの貴重な時間を食いつぶすこの法則の正体と、脳のバグを逆手に取って時間を生み出す、究極の時短術を解説します。
「時間は、あればあるだけ無駄になる」の法則
パーキンソンの法則の定義は非常にシンプル、かつ残酷です。
「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」
例えば、「1時間で終わる会議」に「2時間」の枠を確保したとします。すると不思議なことに、議論が脱線したり、不要な確認作業が増えたりして、きっちり2時間かかってしまうのです。
なぜ脳は時間を埋め尽くすのか?
脳は「空白」を嫌います。時間が余っていると、無意識のうちに以下のような心理が働きます。
- 完璧主義の罠:「もっと良くできるはずだ」と、過剰な修正や推敲を繰り返す。
- 余裕への不安:「こんなに早く終わっていいのか?」と不安になり、不要な作業を追加する。
- 先延ばし:「まだ時間があるから、後で本気を出そう」と着手を遅らせる(学生症候群)。
その結果、本来は短時間で終わるはずのタスクが、与えられた時間の枠に合わせて勝手に膨張していくのです。

恐怖!この法則は「お金」にも適用される
この法則の恐ろしいところは、時間だけでなく「お金」にも当てはまる点です。
「支出の額は、収入の額と等しくなるまで膨張する」
「給料が上がったら貯金しよう」と思っていても、昇給した分だけ生活レベルを上げたり、無駄遣いが増えたりして、結局月末には口座が空っぽになる。これも脳が「ある分だけ使い切ろう」とするパーキンソンの法則の仕業です。
時間もお金も、意識的に「枠」を制限しなければ、永遠に搾取され続けるのです。
時間を圧縮する「3つの脳科学的ハック術」
この強力な法則に対抗するには、「意志の力」で早く終わらせようとしても無駄です。「仕組み」で物理的に時間を制限するしかありません。
1. 自分で「仮の締切」を設定する(デッドライン効果)
上司から与えられた本当の締切が「金曜日」なら、自分の中での締切を「水曜日」に設定します。
ポイントは、手帳やカレンダーに赤字で書き込み、脳を「本気で騙す」ことです。
締め切りが迫ると、脳はノルアドレナリン(集中物質)を分泌し、驚くべき処理能力を発揮します(火事場の馬鹿力)。これを意図的に引き出しましょう。

2. タスクを極限まで細分化する(サラミ法)
巨大なサラミも、薄くスライスすれば簡単に食べられます。仕事も同じです。
「企画書作成」という大きな塊のままだと、どこから手を付けていいか分からず、先延ばしが発生します。
「目次案を作る(15分)」「データを探す(30分)」のように、1時間以内で終わる小さなタスクに分解し、それぞれに短い制限時間を設けてください。小さな達成感が、次の行動への推進力になります。
3. 「タイムボクシング」で強制終了する
「終わるまでやる」のではなく、「決めた時間で終わらせる」という発想に切り替えます。
「この資料作成は14時から15時まで」とカレンダーの枠(ボックス)を先に確保し、その時間が来たら、たとえ途中でも強制的に作業を終了します。
「時間が限られている」という制約こそが、集中力と工夫を生み出す最大の鍵になります。
まとめ:時間は「命」そのものである
時間は、お金のように貯めることができず、誰にでも平等に過ぎ去っていきます。
パーキンソンの法則に流されて時間を浪費することは、あなたの命を浪費することと同義です。
「時間は、あればあるだけ無駄になる」。
この残酷な真実を直視し、自ら時間の「枠」を制限する勇気を持った人だけが、人生の主導権を握ることができるのです。
明日、あなたはどのタスクの締切を「前倒し」しますか?
🧠 この記事で使われた用語解説
- パーキンソンの法則 (Parkinson’s Law): 「仕事量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則。第二法則として「支出は収入の額まで膨張する」もある。
- デッドライン効果 (Deadline Effect): 締切が近づくことで、集中力や作業効率が劇的に高まる心理現象。
- 学生症候群 (Student Syndrome): 余裕があるうちは着手せず、締切ギリギリになってから慌てて作業を始める行動傾向。
- タイムボクシング (Timeboxing): あらかじめタスクにかける時間を決め、カレンダーの枠(ボックス)を確保して、その時間内で作業を行うタイムマネジメント手法。