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「いちいち指示を出さないと動けない」
「自分で考えて提案してこない」
「トラブルが起きるまで報告してこない」
あなたのチームに、そんな「指示待ち部下」はいませんか?
「最近の若いのは主体性がない」と嘆くのは簡単ですが、心理学の視点では少し怖い可能性が浮上します。
もしかすると、部下が動かないのではなく、あなたの日々のマネジメントが部下の脳に「無力」を学習させてしまったのかもしれません。
今回は、優秀なリーダーほど陥りやすい罠「学習性無力感」と、そこから部下を解放する技術について解説します。
脳が「努力は無駄だ」と悟る瞬間
心理学者マーティン・セリグマンが行った、残酷ですが有名な実験があります。
1. **グループAの犬:** 電気ショックが流れても、目の前のボタンを押せば止められる。
2. **グループBの犬:** 電気ショックが流れても、何をしても止められない(不可避)。
この経験をさせた後、両方の犬を「低い柵を飛び越えれば逃げられる箱」に入れます。
すると、どうなったか?
ボタンで止められたAの犬は、すぐに柵を飛び越えて逃げました。
しかし、「何をしても無駄だった」経験をしたBの犬は、逃げ道があるのに、床にうずくまって電気ショックに耐え続けたのです。
これが「学習性無力感(Learned Helplessness)」です。
「自分の行動では結果を変えられない」と脳が学習すると、生物は抵抗(思考)をやめ、完全に受動的になります。

マイクロマネジメント=脳への電気ショック
これをビジネスの現場に置き換えてみましょう。
「良かれと思って」部下の仕事に細かく口出しするマイクロマネジメントは、部下の脳にとって「不可避の電気ショック」と同じ効果を持ちます。
* 部下が自分で考えて資料を作った → 「フォントが違う、ここも直して」と全修正される。
* 新しい提案をした → 「前例がない」と即却下される。
* 自分で判断して動いた → 「勝手なことをするな」と怒られる。
これらが繰り返されると、部下の脳はこう学習します。
「自分で考えても、どうせ修正される(無駄だ)」
「言われた通りに動くのが、一番痛くない(最適解だ)」
こうして、思考回路を自らシャットダウンした「完璧な指示待ち人間」が完成します。
彼らが動かないのは、能力がないからではなく、脳が賢く「省エネ(諦め)」を選択した結果なのです。
呪いを解く!科学的「放置プレイ(任せる技術)」
一度「無力感」を学習した脳を再起動させるには、「自分の行動で結果が変わった(効力感)」という体験を積ませるしかありません。
そのためにリーダーがすべき3つのハックです。
① 「やり方(How)」には口を出さない
ここが最重要です。
リーダーが決めるのは「ゴール(What)」と「期限(When)」だけ。
そこに至るルート(How)は、たとえ遠回りに見えても部下に任せます。
* ❌ 「この手順通りにやって」
* ⭕ 「来週までにこの状態にしてほしい。やり方は君に任せるよ」
自分でルートを選ばせることで、脳の「自律性」スイッチが入ります。
② 「失敗の許容ライン」を最初に握る
部下が動けないのは「失敗したら怒られる」という恐怖があるからです。
心理的安全性を担保するために、事前にセーフティネットを張ります。
* ⭕ 「もし○○円以上の損失が出そうになったら、すぐに相談して。それ以下のミスなら君の判断でカバーしていい」
「ここまでは暴れていい」という檻の広さを示すことで、部下は安心して走り回れます。
③ フィードバックは「結果」ではなく「プロセス」へ
結果が出た時だけ褒めるのではなく、「自分で考えて工夫した点」を見つけて承認します。
「あの時のあの判断は良かったね」と言われることで、脳は「自分の思考には価値がある」と再学習し、無力感が解除されていきます。

まとめ:リーダーの仕事は「我慢」すること
部下に任せるより、自分でやった方が早いし、確実です。
しかし、それを続けている限り、あなたは一生プレイングマネージャーとして疲弊し続け、部下は一生指示待ちのままです。
口を出したい気持ちをグッとこらえて、「任せる」というリスクを取ってください。
あなたが手放したコントロールの分だけ、部下の脳は覚醒し始めます。
📚 参考文献・引用元
- ・マーティン・セリグマン(著)『楽観主義を習得する』 パンローリング
- ・ダニエル・ピンク(著)『モチベーション3.0』 講談社
- ・山本五十六の名言「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」