目次
  1. 隠された脳の波「BRAC(基本的休憩活動周期)」
  2. 脳からの「休息サイン」を見逃すな
  3. 実践:90分+20分の「黄金サイクル」ハック
  4. ① 90分のブロックを設定する
  5. ② 20分の「完全オフ」をとる
  6. まとめ:波に乗るサーファーのように仕事をする

「今日は一気に仕事を片付けるぞ!」と意気込んだものの、2時間ほど経つと急に頭がボーッとして、スマホを触り始めてしまう……。
そして「自分は意志が弱い」と自己嫌悪に陥る。

もしあなたがそう感じているなら、それは意志の問題ではありません。
「脳の構造(ハードウェア)」の問題です。

実は、人間の脳が生理学的に深く集中を持続できる限界は、最大でも「90分」と言われています。
今回は、体内時計に刻まれた絶対的なリズム「ウルトラディアン・リズム」を理解し、脳を枯渇させずに使いこなすための取扱説明書を共有します。

隠された脳の波「BRAC(基本的休憩活動周期)」

睡眠には、約90分周期で深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)を繰り返すサイクルがあることは有名です。
しかし、睡眠研究の先駆者ナサニエル・クレイトマンは、驚くべき発見をしました。

「この90分のサイクルは、起きている間も続いている」

これを「ウルトラディアン・リズム(BRAC: Basic Rest-Activity Cycle)」と呼びます。
私たちの脳は、覚醒中も以下のサイクルを1日中繰り返しています。

  • 高活動期(約90分):脳波がβ波(ベータ波)主体になり、覚醒度が高く、論理的思考や集中力が発揮できる時間。
  • 低活動期(約20分):脳のエネルギー(グルコースや神経伝達物質)が枯渇し、脳波がα波(アルファ波)やθ波(シータ波)へ移行しようとする「休息要求」の時間。

つまり、90分を超えて無理やり作業を続けることは、ガス欠の車をアクセル全開で走らせるようなもの。
パフォーマンスが落ちるだけでなく、脳はストレスホルモン(コルチゾール)を放出し、身体を「防衛モード(闘争・逃走反応)」に切り替えてしまいます。これが「焦っているのに頭が働かない」状態の正体です。

ultradian-rhythm-brac-cycle-chart-japanese.jpg

脳からの「休息サイン」を見逃すな

90分の高活動期が終わると、身体は必ずサインを出します。
これを無視してコーヒーやエナジードリンクで誤魔化してはいけません。

🚑 脳のSOSサイン(低活動期への突入)

  • 急に甘いものが食べたくなる(脳のグルコース不足)
  • あくびが出る、眠くなる
  • 些細なことにイライラする
  • トイレに行きたくなる
  • 集中力が散漫になり、SNSを開いてしまう

これらは「怠け」ではなく、「次の90分のためにメンテナンスせよ」という脳からの司令です。

実践:90分+20分の「黄金サイクル」ハック

ポモドーロ・テクニック(25分+5分)も有効ですが、より深い没入(ディープ・ワーク)が必要なクリエイティブな作業や学習には、この生体リズムに合わせた「90分+20分」セットが最強です。

① 90分のブロックを設定する

タイマーを90分にセットします。この間はスマホを別室に置き、シングルタスクで一点集中します。
(※初心者は集中力が持たない場合があるので、45分や60分から始めてもOKですが、上限は90分と覚えておきましょう)

② 20分の「完全オフ」をとる

ここが最重要です。休憩中にスマホを見てはいけません。
脳の視覚野や言語野を休ませる必要があります。

推奨する休憩アクション:

  • 散歩する:リズム運動はセロトニンを分泌させ、脳をリセットします。
  • 目を閉じて何もしない:視覚情報を遮断するだけで、脳の処理リソースの多くが解放されます。
  • 仮眠(パワーナップ):20分以内の仮眠は、低下した認知機能を劇的に回復させます。

good-break-vs-bad-break-brain-recovery-japanese.jpg

まとめ:波に乗るサーファーのように仕事をする

海に浮かぶサーファーは、常にパドリング(波を漕ぐこと)をしているわけではありません。
いい波(集中力)が来るのを待ち、波が来たら全力で乗り、波が去ったら静かに次の波を待ちます。

仕事や勉強も同じです。
常に全力で泳ぎ続けようとすると溺れます。
私たち人間に備わった「90分の波(ウルトラディアン・リズム)」を知り、波に乗る時は乗り、休む時は徹底的に休む。

このメリハリこそが、長時間労働では決して到達できない「知的生産性」の高みへ、あなたを連れて行ってくれます。
まずは今の作業、90分経っていませんか? 一度立ち上がって、深呼吸してみましょう。

📚 参考文献・引用元

  • ・Kleitman, N. (1963). Sleep and Wakefulness. University of Chicago Press.
  • ・Rossi, E. L. (1991). The 20 Minute Break: Using the New Science of Ultradian Rhythms. Tarcher.
  • ・Schwartz, T., & McCarthy, C. (2007). Manage your energy, not your time. Harvard Business Review.

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