目次
  1. 脳の全体像と「4つのユニット」
  2. ① 大脳:人間らしさを司る「CEO」
  3. 右脳と左脳のクロス・コントロール
  4. 大脳の4つのエリア(葉)と機能
  5. ② 小脳:運動を自動化する「熟練職人」
  6. ③ 間脳:体内環境を整える「調整センター」
  7. 視床と視床下部
  8. 第三の眼「松果体(しょうかたい)」
  9. ④ 脳幹:命を繋ぐ「生命維持装置」
  10. まとめ:自己理解は、脳の理解から

私たちは毎日、スマホやPCのスペックは気にするのに、一番身近で、宇宙で最も複雑なシステムと言われるデバイスのことをほとんど知りません。
そう、あなたの頭の中にある「脳」のことです。

生命維持から、運動、感覚、そして高度な知的活動まで。人の体のすべてをコントロールしているこの重要臓器は、どのように構成され、動いているのでしょうか?

「なぜ直感が働くのか?」「運動神経が良いとはどういうことか?」「睡眠のリズムはどう決まるのか?」

これらの疑問は、脳の構造を知ることで解明できます。
今回は、自分自身というハイスペックマシンを最大限に使いこなすための、詳細な「脳の取扱説明書」をお届けします。

脳の全体像と「4つのユニット」

脳は、非常に繊細な組織です。そのため、頑丈な頭蓋骨と、三重の髄膜(ずいまく)に包まれ、さらにその内側は髄液(ずいえき)で満たされており、まるでプールに浮かんだような状態で厳重に保護されています。

脳の構造は複雑に見えますが、役割の異なる大きく「4つのユニット」に分類することができます。

  • ① 大脳(だいのう): 思考、記憶、判断など高次機能を担う司令塔。
  • ② 小脳(しょうのう): 運動の制御やバランス調整を行う熟練職人。
  • ③ 間脳(かんのう): ホルモンや自律神経の中枢となる調整役。
  • ④ 脳幹(のうかん): 呼吸や循環など生命維持に直結する土台。

それぞれの部位がどのように連携しているのか、詳しく見ていきましょう。

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① 大脳:人間らしさを司る「CEO」

脳全体の約80%を占めるのが大脳です。思考、記憶、判断、感情、創造性、社会性など、人間ならではの高度な機能を一手に担う、まさに脳のCEO(最高経営責任者)です。

右脳と左脳のクロス・コントロール

大脳は左右の半球に分かれていますが、面白いことに体の制御は「交差」しています。右脳は左半身の、左脳は右半身の運動や感覚を支配しています。これは、脳と身体をつなぐ神経が、首の付け根あたり(延髄)で反対側に交差しているためで、「錐体交叉(すいたいこうさ)」と呼ばれます。

また、一般的に左脳と右脳では得意な役割が異なると考えられています。

* 左脳(論理脳): 話す、書く、計算、分析など、論理的思考や言語能力に長けています。
* 右脳(感覚脳): ひらめき、イメージ、空間認知、芸術性など、直感的な処理に長けています。

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大脳の4つのエリア(葉)と機能

大脳の表面は、場所によってさらに細かく役割が分担されています。大きく4つの「葉(よう)」に区分されます。

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  • 前頭葉(ぜんとうよう): おでこの裏側。運動の指令、精神活動、判断、記憶、そして「やる気」や「我慢」を司る、人間性の中枢です。
  • 頭頂葉(とうちょうよう): 頭のてっぺん周辺。触覚、痛覚、温度感覚などの体性感覚や、視覚・聴覚情報の統合、計算などに関わります。
  • 側頭葉(そくとうよう): 耳の周辺。記憶の形成(海馬が近い)や、聴覚情報の処理、言語の理解に関与します。
  • 後頭葉(こうとうよう): 後頭部。目から入った視覚情報の処理を専門に行います。

② 小脳:運動を自動化する「熟練職人」

大脳の後下方にあるのが小脳です。ここは、運動の制御、バランス調整、姿勢維持の専門家です。

皮膚や筋肉からの情報を受け取り、歩く・走るなどの動作がスムーズに行われるよう、大脳からの大まかな指令を、全身の筋肉への細かい指令へと変換して調整します。
また、「運動の学習」にも深く関わっています。自転車や楽器の演奏など、最初は意識しないとできなかった動作が、練習を重ねることで無意識にできるようになるのは、その運動パターンが小脳に記憶されるからです。

③ 間脳:体内環境を整える「調整センター」

大脳と脳幹の間、脳の深部に位置するのが間脳です。主に「視床」と「視床下部」で構成され、生命維持に不可欠な調整を行っています。

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視床と視床下部

* 視床(ししょう): 嗅覚以外のあらゆる感覚情報を中継し、大脳の適切な部位へ送る「ハブ空港」のような役割です。
* 視床下部(ししょうかぶ): 自律神経系と内分泌系(ホルモン)の最高中枢です。体温、血圧、心拍、食欲、睡眠、性行動、そして怒りや不安などの情動を調整し、体のホメオスタシス(恒常性)を維持しています。

第三の眼「松果体(しょうかたい)」

間脳には、左右の大脳半球の間に位置する「松果体」という小さな内分泌器があります。
ここは、睡眠ホルモンである「メラトニン」を分泌する重要な器官です。光の情報を感知して概日リズム(体内時計)や季節変動、睡眠と覚醒のリズムを調節する働きがあり、古くから「第三の眼」とも呼ばれてきました。

④ 脳幹:命を繋ぐ「生命維持装置」

脳幹は、大脳を支える幹(みき)のような形をしており、上から「中脳」「橋」「延髄」で構成されます。意識、呼吸、循環など、生きるための最も基本的な機能を司るエリアです。

* 中脳(ちゅうのう): 視覚や聴覚の反射中枢があります。また、ここにある「黒質」という部位の変性は、パーキンソン病の原因の一つとされています。
* 橋(きょう): 大脳・小脳と延髄を結ぶ神経の重要な通り道です。顔の感覚や運動に関わる神経核が集まり、呼吸の調整にも関与します。
* 延髄(えんずい): 脊髄へと繋がる最下部。呼吸中枢や心臓中枢があり、生命維持に不可欠です。また、咳、くしゃみ、嚥下(飲み込み)、発汗などの反射中枢もここに集中しています。

まとめ:自己理解は、脳の理解から

いかがでしたか?
思考する大脳、運動を習得する小脳、リズムを整える間脳、そして命を守る脳幹。

あなたの頭の中には、これほど精巧で複雑なシステムが詰め込まれています。
「やる気が出ないときは前頭葉が疲れているのかも」「眠れないのは松果体のリズムが乱れているのかも」。
このように脳の構造と役割を知ることは、自分自身の状態を客観的に理解し、より良いパフォーマンスを発揮するための強力な武器となるはずです。

📚 参考文献・引用元

  • ・エリック・R・カンデル 他(著)『カンデル神経科学 第5版』 メディカル・サイエンス・インターナショナル
  • ・マーク・F・ベアー 他(著)『神経科学―脳の探求』 西村書店
  • ・坂井 建雄, 久光 正(監修)『プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版』 医学書院
  • ・厚生労働省 e-ヘルスネット「メラトニン」「脳の構造と機能

※本記事は一般的な脳の構造と機能について解説したものであり、医学的な診断や治療を目的としたものではありません。

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