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「今年こそは毎日英語を勉強する」
「夏までに5kg痩せるために、間食をやめる」
そう固く誓ったはずなのに、気づけば三日坊主で終わっている。
そして「自分はなんて意志が弱いんだ」と自己嫌悪に陥る。
もし心当たりがあるなら、朗報です。
あなたが失敗するのは、あなたの性格や根性のせいではありません。
「意志力(Willpower)」という、あまりにも頼りないあやふやなエネルギーを燃料にしているからです。
脳科学的に見て、意志力はスマホのバッテリーと同じ「消耗品」です。朝は満タンでも、日々の決断で消耗し、夜には枯渇します。
そんな不安定なものに人生の大事な目標を委ねてはいけません。
必要なのは「根性」ではなく、脳をロボットのように動かす「プログラム」です。
今回は、コロンビア大学の研究で「目標達成率を平均で2倍〜3倍に高める」ことが実証されている最強のテクニック、「IF-THEN(イフ・ゼン)プランニング」を深掘り解説します。
「IF-THENプランニング」とは何か?
心理学者のピーター・ゴルヴィツァーが提唱したこの手法は、名前の通り非常にシンプルです。
以下の構文に従って、事前に「行動のルール」を決めておくだけです。
* **IF(条件):** 平日の朝7時になったら
* **THEN(行動):** 机の前に座って単語帳を開く
たったこれだけ? と思うかもしれませんが、このシンプルさこそが脳科学的な鍵なのです。
なぜ「300%」も成功率が上がるのか?
通常の目標(例:「英語を頑張る!」)は、実行するたびに脳の前頭葉(意志力を司る司令塔)を使って、「よし、やるぞ!」と決断を下す必要があります。これは脳にとって高負荷な作業です。
一方、IF-THEN形式で何度も脳に刷り込むと、その行動は前頭葉ではなく、**「大脳基底核(だいのうきていかく)」**という無意識の領域に委ねられます。
ここは「梅干しを見たら(IF)→唾が出る(THEN)」のような、**反射的な回路**を司る場所です。
つまり、IF-THENプランニングとは、**「やるべき行動」を「反射」に変えてしまう技術**なのです。
反射に意志力は不要です。あなたはロボットのように、条件(IF)が来たら自動的(THEN)に動けるようになります。

実践編:効果を最大化する「3つの型」
IF-THENプランニングは、単なる習慣作り以外にも応用可能です。
人生のあらゆる場面をハックする3つのパターンを紹介します。
① 獲得型(良い習慣を作る)
新しい行動を身につけるための基本形です。コツは、IF(条件)を可能な限り具体的にすることです。
* ❌ Bad: 「夜になったら、筋トレをする」
* (「夜」は曖昧すぎて脳が反応できません)
* ⭕ Good: 「お風呂から上がって髪を乾かしたら、その場でスクワットを10回する」
* (「髪を乾かす」という既存の習慣をトリガーにすると最強です)
② 抑制型(悪い習慣をやめる)
「〜しない」という否定形の目標は脳にとって難易度が高いものです。
「〜したくなったら、代わりの行動をする」という書き換え(置換)を行いましょう。
* ❌ Bad: 「お菓子を食べない」
* ⭕ Good: 「お菓子が食べたくなったら、炭酸水を一杯飲む」
* ⭕ Good: 「ついスマホを見そうになったら、深呼吸を1回して画面を伏せる」
③ 防御型(障害に対処する)
ここが最も重要です。計画は必ず崩れます。
「邪魔が入った時どうするか」をあらかじめプログラムしておくことで、挫折率を劇的に下げることができます。
* 「もし残業で帰りが22時を過ぎたら、英語の勉強は15分だけでOKとする」
* 「もし飲み会で食べすぎたら、翌日のランチはサラダだけにする」
* 「もしイライラして怒鳴りそうになったら、トイレに逃げ込んで6秒数える」
「失敗パターン」すらも計画に組み込むこと。これが完璧主義の罠から抜け出す秘訣です。
効果が出ない時のチェックリスト
「やってみたけど続かない」という場合、以下の3つのミスを犯している可能性があります。
- IF(条件)が曖昧すぎる:「疲れたら」「暇な時」ではなく、「電車に乗って座ったら」「帰宅してドアを開けたら」など、映像としてイメージできるトリガーを設定してください。
- THEN(行動)がハードすぎる:「毎日1時間走る」は反射でやるには重すぎます。「ランニングシューズを履く」までを行動目標にしてください。一度動き出せば、脳は勝手にやる気を出してくれます(作業興奮)。
- 詰め込みすぎ:一度に10個もIF-THENを作ると脳が混乱します。まずは「1〜2個」に絞り、それが無意識化(2ヶ月程度)してから次を追加しましょう。

まとめ:脳をプログラミングする自由
「計画通りに動くなんて、人間味がなくて窮屈だ」と思うかもしれません。
しかし逆です。
「やるかやらないか」で毎日迷い、自分と戦い、結局負けて自己嫌悪に陥る日々こそが、不自由ではないでしょうか?
迷いを消し、やるべきことを自動化してしまえば、あなたの脳のメモリは「本当に創造的なこと」や「楽しむこと」にフル活用できます。
今日から、手帳やスマホのメモに「IF-THEN」を一つ書き込んでみてください。
その一行のコードが、あなたの人生というOSを劇的にアップデートしてくれるはずです。
📚 参考文献・引用元
- ・Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist.
- ・Heidi Grant Halvorson (2011). Succeed: How We Can Reach Our Goals. Plume.
- ・Webb, T. L., & Sheeran, P. (2006). Does changing behavioral intentions engender behavior change? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin.