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午後1時半、重要な会議中。
お腹は満たされているはずなのに、抗いがたい強烈な眠気が襲ってくる。
必死に目を開けようとするが、頭がボーッとして議論の内容が入ってこない。
これは単なる「食べ過ぎ」や「気の緩み」ではありません。
あなたの体内で起きている生理学的な緊急事態、「血糖値スパイク」が原因です。
脳は、安定したエネルギー供給がなければ正常な「決断」ができません。
今回は、午後の生産性を地に落とす「魔の眠気」の正体と、それを防ぐための科学的な食事術について解説します。
脳を襲うジェットコースター「血糖値スパイク」とは?
私たちは食事から「糖質(炭水化物)」を摂取すると、それがブドウ糖に分解され、血液中の糖分濃度(血糖値)が上がります。ここまでは正常な反応です。
問題なのは、短時間で大量の糖質を摂取した時です(例:ラーメンと半チャーハン、大盛りのパスタ、甘い菓子パンなど)。
- 急上昇:血糖値が垂直に跳ね上がります。
- インスリンの大量分泌:危険を察知した膵臓が、血糖値を下げるホルモン「インスリン」を大量に放出します。
- 急降下(クラッシュ):インスリンが効きすぎて、今度は血糖値が急激に下がりすぎます(反応性低血糖)。
この**「急上昇からの急降下」**こそが血糖値スパイクです。
血糖値が急降下した時、脳はエネルギー不足(ガス欠)に陥ります。その結果、強烈な眠気、集中力の低下、イライラ、だるさといった症状が現れるのです。

「脳が疲れたから甘いもの」は最悪の悪循環
「頭を使ったから糖分補給!」と言って、甘いチョコレートやエナジードリンクを飲んでいませんか?
確かに一時的に血糖値は上がり、一瞬だけ元気になった気がします。
しかし、それは再び「スパイク(急上昇→急降下)」を引き起こす引き金に過ぎません。
結果として、1時間後にはさらに酷い疲れと集中力低下を招くことになります。
脳のパフォーマンスに必要なのは、急激な「点滴」ではなく、安定した「持続的な供給」なのです。
午後の生産性を守るバイオハック食事術
では、どうすればスパイクを防げるのか?
明日から実践できる、科学的な「食べ方のハック」を3つ紹介します。
① 「ベジ・ファースト(野菜が先)」の鉄則
食事の最初に、食物繊維が豊富な野菜(サラダやお浸し)、海藻、きのこ類を食べてください。
食物繊維は腸の壁にバリアを張り、後から入ってくる糖質の吸収スピードを緩やかにしてくれます。これだけで、血糖値の上昇カーブは劇的に滑らかになります。
② 「白い炭水化物」を避ける(低GIを選ぶ)
白米、食パン、うどんなどの精製された「白い炭水化物」は、消化吸収が速く、スパイクを起こしやすい食品です。
可能であれば、玄米、全粒粉パン、蕎麦といった、精製度が低く食物繊維を含む「茶色い炭水化物(低GI食品)」を選びましょう。
③ 食後15分の「ちょい歩き」
食後すぐに座り込んで仕事を始めると、上がった血糖値の行き場がなくなります。
食べてから15分〜30分の間に、少し早足で散歩をしたり、階段の上り下りをしたりと、軽く体を動かしてください。筋肉が血液中のブドウ糖をエネルギーとして消費してくれるため、食後高血糖を効果的に抑えることができます。

まとめ:食事は「脳の燃料補給」である
私たちは、ハイオクガソリン仕様のスポーツカーに、質の悪い灯油を入れたりはしません。
しかし、自分の肉体という「最強の資本」に対しては、平気でそれをやってしまいます。
ランチは単なる腹ごしらえではありません。午後のあなたの「決断の質」を決定づける、重要な燃料補給タイムです。
今日のランチから、「野菜を先に一口食べる」「食後に少し遠回りして帰る」といった小さなハックを試してみてください。
午後のクリアな思考と、疲れ知らずの集中力が手に入るはずです。
📚 参考文献・引用元
- ・Brand-Miller, J., et al. (2002). The New Glucose Revolution. Marlowe & Company.
- ・Jenkins, D. J., et al. (1981). Glycemic index of foods: a physiological basis for carbohydrate exchange. The American Journal of Clinical Nutrition.
- ・厚生労働省 e-ヘルスネット「血糖値」